比企点描 >
越辺川
東松山市の南東のはずれ、九十九側と越辺川の交わる正代地域の左岸、10月に入ると曼珠沙華の花が見頃になる。一週間に亘って左岸堤防の法面左右で、 日照の関係で花の見頃に一週間程度の差がある。 早朝のウォーキングコースは、この時期、木々の香りの強い児沢コースからこの堤防コースに変わる。 6時頃、登り始めた太陽が金色の光の矢を雲間から投げかけると、足下をすぎていく堤防道路の左右で、曼珠沙華の群れがあちらこちらで赤く輝き始める。 過ぎ去った年月の向うに逝った人々が、まるで帰ってきたように、このときに燃えさかる。 早朝の空はあくまで澄んで、遠くの雲が赤い火照りに染まり、時も消えていくようだ。 曼珠沙華は不思議な花だ。すっくと白く伸びた茎の上に赤い花弁が激しく燃える。 やがて時がたつと、花弁には白い筋がめだって筋張ってくる。 そして、1週間もたつとまるで燃え尽きた残り火のよう、やがて一面に枯れはてた灰色の群れに変わっていく。 夏の名残の風は、気がつくと突然冷たさ増して、低い太陽の光線も枯葉色をした秋草の中に消えていくのみ。 |
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