丘陵歴史散歩
平成24年12月1日

1.巌殿観音(巌殿山正法寺)
東松山市の南端、岩殿丘陵の先端にある物見山中腹の岩殿の、化石を含む 砂岩層岩盤をくりぬいた山肌に、坂東33番観音霊場の内の第10番巌殿山正法寺がある。養老2年(西暦712年)に創立されたこの寺は真言宗智山派のお寺で、現観音堂は、明治に焼失したため日高のお寺から移築されたものである。
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この寺は、ご本尊として千手観世音菩薩を祀る修験道の寺であり、吉見にある坂東11番札所吉見観音(岩殿山安楽寺)に対して、比企の巌殿観音ともいわれている。
この岩殿の門前町はかつてはきわめて賑わった場所であったが、現在はその家並みに昔日の面影はない。本殿の裏の柔らかな岩壁に彫られている四国88カ所の観音霊場の石仏、また、崖上の林の中には、坂東33カ所、西国33カ所、秩父34カ所の観音霊場を体現した石仏があり、この石仏にお参りすることにより、実際に現地に行かなくても御利益があったといわれている。
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四国88カ所霊場摩崖石仏 |
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参道石段上から岩殿集落 |
崖上林間の100霊場の石仏群 |
2.大銀杏
境内には、樹齢推定700年の大銀杏がある。その葉は秋にもなれば黄金色に 輝く。埼玉県内で最大の銀杏である。東松山市天然記念物に指定されている。樹高20m, 目の丈の胴回り11m、しくれだって大地に下ろしている根は絡み合って岩を割っている。![]() |
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この時期になれば、 樹上と地面は同じ黄色に染まる。 この樹は養老木とも呼ばれ、子供を授け母親の乳の出を守るものと信仰された。 横枝から垂れ下がる乳房状のこぶは、樹木の巨大さと相まって神秘である。 銀杏はその葉に水分を蓄える樹木で、昔の人は火災時の防火壁の役割を与えた。 熱を受けると葉は水をしたたらせる。 本堂の明治の火災時にこの銀杏はやはり燃えた。その痕跡を樹体内に留めている。 黒く焼け焦げたその部分は、なぜかその痕跡は今も生々しい。 雄大なこの樹はすべてを包み込んでいくようだ。 |
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樹幹の裂け目の焼け跡 |